2013年3月26日火曜日

安倍のミックス

 先日、ある飲み会に出席したところ、参加者から「アベノミックスはどうなの?」と質問されました。簡単に答えられる質問ではありませんが、話しているうちに、彼ら・彼女らの関心が一つには住宅ローンの問題にあることが判明しました。つまり、インフレが生じると、住宅ローンの金利がどうなるのだろうかとか、2%のインフレにとどまらず、ハイ・インフレになるのではないかとか、それなら今のうちに返済したほうがいいかとか、そういったことです。
 テレビ、新聞、ネット等で様々なエコノミスト、アナリスト、経済学者の発言に注目されている様子です。専門家の皆さん、庶民の期待を裏切らないように、責任をもって発言してください。
 
 さて、経済は複雑系の世界、不確実性の世界です。簡単に将来予測ができるなら、苦労はしません。しかし、物理学でもある程度のシュミレーションが可能なように、経済学でも様々な限定つきである程度のことは言うことができるかもしれません。
 例えば先日、白川日銀前総裁が発言したように、金融緩和策にしてもそれがインフレにつながるというリンクは存在しないというのは、私の意見でもその通りと思います。リフレ派の主張は、ヘリコプターマネー論や貨幣数量説に依拠していますが、そんなものは絵に書いた餅に過ぎません。
 ただし、本ブログでも書いたように、金融緩和策が為替相場(の「期待」)に影響を与える経路は存在します。実際は、円安となり、輸入品の価格が上昇して、私たちの生活を直撃していることは周知の事実です。
 しかし、インフレが生じると、それが「原因」となって経済が好況に転じるという「結果」がもたらされるという(まともな)経済学を、少なくとも私は知りません。何しろ、マネタリズム(貨幣数量説)も貨幣の中立性を前提としているのですから、それに頼ることはできません。昔、フィリプスという人がフィリプス曲線なるものを考え、失業率の低いとき(つまり好況時)には貨幣賃金が上昇すると言いましたが、物価が上昇するとは言っていません。かりに物価版のフィリプス曲線を考えるとしても、物価上昇が原因で、失業率の低下(好況)が結果するということでは決してありません。相関は因果関係ではありません。
 先日、テレビを見ていたら、物価が上昇する期待があると、人々は物価上昇前にモノを購入するので消費が増えるといっているエコノミストがいました。これなどは、インフレによる強制的消費の経済学と言えるでしょうか? そういえば1997年の消費税増税の時にも似たようなことがありました。その時は、増税前に駆け込みの需要増があり、その後、経済は急速に冷え込みました。恐ろしい限りです。
 ただし、安倍氏の経済政策は「安倍のミックス」です。彼は何としてでも夏の参院選挙に勝って改憲したいのでしょう。あらゆる手(財政支出増を含む。ただし賃金の大幅引き上げは決してしない)を駆使して景気を回復させようとしています。政治的背景を何も知らないスティグリッツ教授が安倍氏にあってほめたとか。これも困ったことですが、ともかく、小泉構造改革と異なって、景気をよくする要素がないわけではありません。
 良心的な経済学者である限り、経済の領域に限っても予測不能というしかないのではないでしょうか?

0 件のコメント:

コメントを投稿