2013年5月16日木曜日

民主主義と相容れないTPP ドーハ化を!

 TPPについて話をしていて気づくことの一つは、いまだにTPPが自由貿易協定の一つであり、「平成の開国」を実現するものと考えている人がいることです。
 そもそもTPP交渉は秘密裏に行なわれており、その内容はたまにリークされる部分から推測するしかありません。また交渉に参加している者の中には多数の巨大多国籍企業の経営者が含まれていますが、米国でも議員のほとんどは情報を与えられていまん。もちろん、このような秘密主義と一部の利害関係者の意見だけを聞くという態度は、民主主義に対する敵対以外の何物でもありません。よくテレビでTPPに賛成・反対の世論調査なるものが出ますが、そもそも内容のよく知られていないものについて賛成も反対もありません。
 もとより内容については、何も分かっていないというわけではありません。リークおよび過去の米国のFTA交渉時の態度(WTOのドーハラウンド、NAFTA、米韓FTAなど)からTPPが「24領域」にわたっていることがわかっています。それは決して財・サービス貿易の自由化にとどまるものではありません(もちろんそれも問題ですが)。むしろ一国の制度(つまり、法律、慣習、モラル、文化など)にかかわるものがほとんどです。例えば参加国が税制や社会保障制度を変えるとします。もしそれが外国企業・投資家の利益に合わなければ、彼らは当該国の政府を法廷(そのために設置される国際法廷)に訴えることができます。つまり、マネーゲームなどを行なう一握りの外国の企業・投資家の利益のために当該社会が犠牲にされることになる危険性があります。これが決して絵空事でないことは、外国からの投資を呼び込むことを期待して多数の相互投資協定(BITs)を結んできたインド政府が最近外国人投資家に訴えられていることからも明らかです。これをISDS(投資家・国家紛争解決)条項と呼びます。
 しかも、いったん参加したら最後脱退することは不可能です。ちょうど幕末に日本が欧米列強と不平等条約を結ばされ、それを変えるために涙ぐましい努力をしたことを思い出す必要があります。「平成の開国」などと浮かれている場合ではありません。
 日本の公的医療保険制度、年金制度、労働基本法、環境、農業・国土利用などが崩壊し、社会が崩壊することのないよう、TPPの問題点を明らかにし、その秘密裏の交渉に抗議し、日本が参加しないようにする必要があります。
 これに対して、自民党(安倍政権)が参加のための6条件を提示したから大丈夫だという人がいるかもしれません。しかし、決して大丈夫ではありません。そもそも6条件なるものは米国(議会等)にほとんど伝わっていません。それにそれが伝わったとしても、彼らは驚くか、あるいは激怒して最終的には無視するでしょう。というのは、6条件をのむような内容なTPPは米国の推進派にとって無意味だからです。
 そこで、6条件を無視するようなTPP案が日本に提示されたとき、安倍政権はどのような態度を取るでしょうか、これが大問題となります。一番ありそうなシナリオは、日米同盟の強化のためというような名目で参加を決めるというものです。というのは、そこでTPPの不参加を決めることは、最初からTPPに参加しないという決断を行なった場合よりも、間違いなくはるかに日米関係を悪化させるからです。つまり安倍政権は、事前協議に参加を表明した段階で「無条件のTPP参加」を表明したのも同然なのです。
 しかし、WTOのドーハラウンドが決裂したように、TPPも日本が交渉参加を表明したため、交渉が紛糾し、ドーハ化するシナリオも残されてはいます。日本の多くの人々がTPPの問題条項に反対の声を高く上げ、国会が拒絶すれば、これが日本社会を崩壊から救う最後に残された道となるでしょう。



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