2013年6月15日土曜日

服部茂幸『新自由主義の帰結』(岩波書店)を推薦 「なぜ、このような世界になってしまったのか」

 今日は、新しく出版された岩波新書を推薦します。
 私の講義(経済学入門)を履修している人は、是非、読んでください。
 また世間一般の人も、アベノミックスを信じている人も信じていない人も、是非、読んで欲しいと思います。

 同書は、⑴なぜ失業率が上がるのか、⑵なぜ賃金が停滞する(または低下する)のか、⑶なぜ金融危機・財政危機・通貨危機が頻発するのか、⑷なぜ1%と99%の間の格差が拡大するのか、を「新自由主義レジーム」という視角から分かりやすく説明しています。
 
 結論的に言えば、アベノミックスは、この「新自由主義レジーム」から抜け出すのではなく、むしろそれを追求するものです。
 
 安倍政権は、日銀に「異次元の金融緩和」を強要し、それによって年あたり2%のインフレーション(平均的な物価水準の上昇)を引き起こし、このインフレーションを通じて、景気を回復させると言っています。
 しかし、まともな経済学に、インフレーションが生じれば景気がよくなることを示す理論はありません。
 実際、今年、インフレーション「期待」を煽った結果、長期金利(新発10年物長期国債の金利)が上昇し、黒田総裁の日銀は慌てています。また「異次元の金融緩和」が行なわれるという「期待」は、円売り・ドル買いを引き起こし、円安・ドル高をもたらしました。その結果、確かに自動車産業などの輸出産業は輸出量を増やすことが期待されていますが、輸入物価が上昇し、所得の増えていない庶民の家計を直撃しています。
 
 景気がよくなるというのは、⑴失業率が低下し、⑵貨幣賃金が増加し、⑶消費需要が拡大し、⑷企業の設備投資も拡大する、といった状態を意味します。
 アベノミックスは、これら、特に⑴と⑵については、まったくといってよいほど沈黙しています。それが「新自由主義レジーム」を追求するものだからです。それは、貨幣賃金を抑制する性質のものだからです。
 実際、驚くべきことに、米国では、この40年間に労働生産性の2倍以上の上昇にもかかわらず、労働者の平均的な実質賃金率(1時間あたり)は低下してきました。
 そろそろ米国の「失われた40年」をもたらしたものの正体が何なのかに多くの人々が気づくべき時です。





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