2014年3月8日土曜日

原発事故の費用 1 除染、除染費用および除染ビジネス

 2011年3月11日の震災後に生じた福島第一原発事故によってどれほどの費用が生じたのでしょうか?
 費用のすべてを集計することは難しい作業ですが、一部だけでも明らかにしてみたいと思い、少し調べてみました。

 今日はまず除染費用を取り上げます。
 ちなみに、除染というのは、一定の場所、例えば建物の屋根や壁に付着した放射性物質を高圧水をかけて取り除いたり、あるいは小学校などのグランドや公園、田圃などの表土を取り除いて別の場所に移すことと定義的に言うことができます。
 ただし、水をかけても放射性物質や放射能がなくなるわけではありません。放射性物質が高圧水に溶け込みだけです。また表土を取り除いても同様です。そこで除染というからには、汚染水を特殊な容器に入れて保存したり、汚染土を別の場所(仮り置場、中間貯蔵施設など)に保管する必要が出て来ます。
 しかしながら、そのような意味での除染さえどこまで行われているかは、まったく不明です。むしろ、京都大学の小出裕章氏が明らかにしているように、例えば高圧洗浄水をかけた後、その水を垂れ流しにしているだけであり、汚染物質を別の場所に移すだけ、つまり「移染」が行われているだけというのが実情のようです。結局、汚染物質は、(汚染土の場合のように)保管場所にとどまるか、それとも(汚染水の場合のように)川に流れ込み、最終的には海を汚染することになります。

 さて、この除染・移染にどれだけの費用が使われているのでしょうか?
 東洋経済によれば、「これまでに財政措置された除染費用は2014年度予算概算要求を含め約1.8兆円に登り、国費はそれを超える追加分が投入されるが、除染費用の総額は5兆円を超える可能性がある」ということです。

 http://toyokeizai.net/articles/-/23983?page=2

 http://www3.nhk.or.jp/news/genpatsu-fukushima/20130723/index_josennhiyou.html

 2012年度 3700億円 
 2013年度 6556億円 
 2014年度 5000億円 概算要求

 最後の 5 兆円という数字(試算)は、独立行政法人産業技術総合研究所のグループによる試算ですが、これは福島県以外の地域についてもきちんと除染すれば必要と考えられる数字です。人や組織によっては、5兆円では無理であり、18兆円、40兆円、80兆円という数字も出されていますが、実際には除染は技術上やその他の理由により不可能であり、これらの数字に実質的な意味はないというしかありません。
 さて、5兆円とされた除染関係費用の中身ですが、産業技術総合研究所のグループの計算では、福島県内の「放射性物質を取り除く作業」、「作業で出た土などの運搬」、および「仮置き場や最長30年間にわたる中間貯蔵施設における保管」などが考えられています。また地域的には、避難区域の除染に2兆300億円、それ以外の地域で3兆1000億円が必要とされています。
 さて、いずれにせよ巨額の数字ですが、それが除染ビジネスを生み出しています。投下された巨額の国費は、結局、建設会社への支払のために使われます。これほどの無駄使いがあるでしょうか。たしかに「除染」によって本当に汚染物質を取り除けるのであれば、まだよしとしなければならないでしょう。しかし、決してそうではありません。本当の意味での除染は技術的にはほとんど不可能であり、多くの場合、汚染の移転が行われるに過ぎないのですから。


0 件のコメント:

コメントを投稿