2015年10月9日金曜日

これが本当の安倍晋三氏の経済的帰結です。 2

 ここでは、まず3つのグラフをあげ、簡単に説明しておきたいと思います。

 家計の貯蓄
 

 
 実に安倍氏が政権についた2013年に家計の貯蓄はマイナス(3.7兆円)を記録しました。戦後はじめてのマイナスです。これは家計の所得(その多くは賃金所得)が消費支出をまかなうに足りず、貯蓄を取り崩す(または借金をする)ことによってカバーしたことを意味します。たしかにそのような事態をもたらした一つの要因が、貯蓄を取り崩して生活する高齢者の増加にあったことは否定できないでしょう。また生産年齢人口(15〜65歳)の人々がプラスの貯蓄を行なっていることも疑いないでしょう。しかし、貯蓄が1997年以降趨勢的にずっと減少してきたことなどを考えても、きわめて大きな要因が低賃金労働の拡大にあったことはまず否定できません。(この詳しい検討は、後日、行なう予定です。)
 残念ながら、2014年、15年については、当該数値を知ることができませんが、この間の実質賃金率の低下、まさにアベノミクスによる円安・輸入品インフレを考えると、事態が好転したとはとても言えません。

 企業の内部留保(内部留保=内部資金ー減価償却費)の拡大

詳しい話しは、すでに紹介している部分もあるので除きますが、労働者の賃金低下、とりわけ非正規雇用の低賃金労働の拡大による賃金圧縮は、日経連の『新時代の日本的経営』(1995年)、OECDの「職の研究」と対日審査(1994年、1995年)頃から、特に1997年からの企業の雇用戦略の一環と見られます。当時、賃金圧縮と物価下落は日銀から注視され、調査が行なわれるほどでした。
 ともかく、その効果は巨大企業の趨勢的な利潤拡大、とりわけ内部留保は著しく増加しました。特に2013年、2014年の増加が注目されます。(ただし、1997年、21世紀初頭、2008年と2009年にマイナスになっていますが、これは当時金融危機の結果です。)繰り返しますが、利潤(特に内部留保)の拡大は、賃金圧縮の犠牲によって実現されたものです。
 しかし、このような内部留保の拡大は、景気をよくしたでしょうか? また99%の人々の暮らしをよくしたでしょうか? もちろん、答えはノーです。(つまり、最初に述べたように、家計貯蓄がマイナスにまでなったのです。)

 それでは、一方、企業は設備投資を拡大したでしょうか?
 
注)2013年、2014年のグラフは、減価償却費と純投資の合計額。

 もちろん、ノーです。上のグラフは、粗投資額(つまり、減価償却費を含む企業の実際の投資額)を示すものですが、その額はやはり1997年頃を境に減少しており、今日でも反転していません。純投資に至っては、マイナスかほぼゼロの状態です。つまり、企業は労働者の犠牲で増やした内部留保を設備投資のためには全く使っていないのです。
 どうしてでしょうか? 理由は簡単です。企業が貨幣賃金を抑制するため、国内消費が増えず、そのため企業が生産能力を拡大する理由がないからです。これはマクロ的に見ると、日本の企業はお互いに頚を絞め合っている状態といったら分かりやすいでしょうか。
 では、余剰の内部留保は、どのように使われるのでしょうか? これについては、かつて私の恩師、宮崎義一先生が<多国籍企業形成の企業余剰資金仮説>として述べたことが当てはまります。要するに、企業は利潤を求めて海外に資金を逃避させる、これです。
 これが実際にあてはまっているか、これについても後日の検討とします。

 ともかく、アベノミクスのデタラメさ加減は明らかです。
 「異次元の金融緩和」といっても、所詮は日銀が市中銀行に供給するマネタリー・ベースが増加するだけ。円安による輸入品物価の上昇は起き、株価の官製相場は形成されましたが、物価が上がっても、賃金、消費、設備投資が増えるわけではありません。くれぐれも政治家の詐欺まがいの宣伝にご注意をお願い申し上げます。

 So much for today.

 



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